『黒澤映画ゼミナール』〜黒澤明的リーダーの条件〜

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zoom RSS 『七人の侍』撮影苦労話も良いけれど…侍一人一人と百姓の生き方、特に菊千代の人生に注目するべし!

<<   作成日時 : 2006/08/22 19:37   >>

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画像 黒澤作品の中で最も生きる手本になる要素満載でありながら、
この映画もまた、その撮影苦労話ばかりが隠れたエピソードとして紹介されすぎてきた悲運の人気作です。
DVDの特典映像しかりTVの「黒澤明特番」しかり。

しかし、何故そこまで美術や鬘や衣装にこだわって、黒澤監督が撮影に時間と手間を掛けたかというと、それはあくまでも、
この物語に登場する人物たちが、いつの時代にも通用する真の生き方を見せてくれた善良なる弱者だったからであり、
映画の中の理想像としてではなく、
歴史の片隅に消えていった、公の記録には残らない人物たちであったけれども、かつて実際に歴史を前に進めてき存在であったことを、
そして現代の世の中にも必ず存在する者たちだということを、世界の観客に伝えたかったからに他なりません。

もしこの世にタイムマシンが存在したならば、黒澤監督はきっと、
それにカメラを積んで彼らを探し出して撮影し、現代人に見せたいと考えて実行に移した事でしょう。
それができないから、過去をリアルに再現しないと、すべてが嘘くさい話となり、絵空事として消える映画になってしまう、
それが許せなかったのです。

そもそも、他人の為に役立つ行動を起こしてこそ、生きる喜びは実感できる、
という、前作『生きる』で得た解答、その価値観の正しさを
たった一人の公務員の妄想としてではなく、複数の人間たちにもあてはまり実現可能だというのを見せたかったのではないでしょうか。

そしてこれは、『羅生門』の木こりが悟り得た結論や最後に取った行動と一致します。

ところで、黒澤監督が愛読したトルストイの『戦争と平和』やドストエフスキーの『罪と罰』にあった
悪の暴力に対抗する善の暴力は幸福を呼ぶか?
というテーマに取り組んだ点で『七人の侍』は、『羅生門』や『生きる』のスケールを遥かに超えた物語に発展せざるを得ませんでした。

そしてその結論が、「勝ったのはあの百姓たちだ。わしたち(侍)ではない」というラストの台詞に込められていた、と私は考えます。
勘兵衛の“「勝っても虚しい」という悲痛な叫び!”それが隠されていた、と。
その証拠に、「戦にはあきた(もう疲れた)」と彼は映画の前半でこぼしています。

つまり、「たとえそれが善なる勝ち戦(かちいくさ)であっても、人は幸福を実感することはできない」と解釈できる内容だったのです。
しかしこのメッセージをラストの台詞から読み取った評論家は、日本にはほとんど居ませんでした。観客も、首を傾げました。

逆に『七人の侍』は“戦の肯定だ”と批判され、その一方で勇ましいアクション映画として人気を博してきたのです。
しかし・・・・・・、私の深読みが的外れでないことを裏付けるかのように、
当時黒澤監督は、シナリオ脱稿の段階ではこんな台詞で最後を結んでいます。


「侍はな・・・この風のように、この大地の上を吹きまくって、
通り過ぎるだけだ・・・土は・・・何時までも残る
・・・あの百姓たちも土と一緒にいつまでも(幸福に)生きる」



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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは。新着から入りました。暑いですけどお互いにいいブログを作りたいですね。うちにもどうぞお越しください。
msn1917
2006/08/22 19:52
TB&コメント有難うございます。
ウェブリから立派な映画ブログが出現しましたね。期待しております。
私は何しろたくさんの映画を見ますので全体評価になりがちですが、宜しくお願いします。
最後の台詞の意味についてはその通りだと思います。ただ、映画的な流れから言うと些か重いのではないか、という感は未だに拭えません。その台詞がなくても私は戦いの空しさは嫌と言うほど感じました故に。
オカピー
2006/08/23 02:33
msn1917さんありがとうございます。
日焼けよりパソコン焼けの毎日ですが、夏ばてに気をつけて盛り上げていきましょう!よろしくお願いいたします。
丑四五郎
2006/08/23 09:21
オカピーさん
こちらこそ、早速ご覧いただき、ありがとうございました。
まさに説明過多と黒澤監督も現場で感じ、最後の台詞を短くしました。それは、歌舞伎調の殺陣が当たり前のチャンバラ時代劇しか作らなかった当時の映画人や、勇ましい時代劇が好きだった当時の観客へ、“戦国の世の虚しさ”の訴えを“におわせる”にとどめた訳です。ちなみに『七人の侍』は黒澤監督初の時代劇(『羅生門』は時代劇とは考えず作っています)、現代劇で評価されていた黒澤にとって、強い使命感とプレッシャーがあり、あれでも精一杯メッセージ性を抑えたと察します。ほとんどの映画評論家、観客、初めて見た時の私の印象も同じでしたから、よく分かります。
賛否両論あってしかり、そこで人の交流が生まれれば、それが作品にとって一番の幸せ、映画の楽しさだと思います。私も『黒澤』に限らず、ハリウッド、日仏ヌーベルバーグ、無声映画から韓流映画まで、当ページで取り上げる予定です。「考えすぎだろー」と笑って楽しんでいただく深読み講座を、モーモー先生と汗かきながら撮影しますので、これからもよろしくお願いいたします。
丑四五郎
2006/08/23 09:31

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