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zoom RSS 無謀!?『天国と地獄』のテレビ朝日版リメイク黒澤明ドラマスペシャル・番組宣伝を観て思う・・・。

<<   作成日時 : 2007/09/01 22:23   >>

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12/1全国公開の『椿三十郎』を大特集。
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『天国と地獄』

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映画版の脚本に忠実に従えば、黒澤監督が喜ぶとでも思っているのだろうか?
そもそも、黒澤流正しいリメイクの作り方は、シェークスピアの原作を時代劇にした『蜘蛛巣城』や『乱』の脚色の仕方に学べば解ると思うのだが?
つまり、時代や場所が変われば、話の中身が変わって当然。逆に、変えるべきところを変えないと、原作が訴えんとする人生の法則をリアルに描くことは出来ない、と黒澤監督はいくつかのインタビューでも語っておられました。
ですから、舞台を21世紀の日本に置き換えて演出する場合、オリジナル映画版『天国と地獄』と、シチュエーションを変えなければならないところは多々有るはずです。
犯人の動機そのものを変えるところから始まって、誘拐する子供の親の職業も、身代金の受け渡し方法も、犯人逮捕にいたる警察の作戦も全部変えないと面白くなくなるに決まっているのです。
今の時代で、高台に豪邸を構えているだけで恨みを持つ医学生など居るはずがないし、社長の運転手だけで生計を立てている中年なんかもいない。当時より高速で走る特急の車掌室の窓から3億の現金入りの「でかくて重い物体」でしかないバックを線路に落としたら大事故になってしまう。ナンバーディスプレーが当たり前で通話明細で相手の電話番号も後で簡単に調べられ、動画メールで子供の姿を見せる事も出来るようになった現代に、権藤から「橋の袂に子供を立たせて生きている顔を見せろ」といわれてその要求に応じる犯人の頭の悪さは白けるに決まっているのです。
オリジナルから貰うとしたら、誘拐されたのが自分の子供じゃなかったと言う部分だけにするべきでしょう?
アルカイダが旅行中の日本人を誘拐して、日本政府に身代金の支払いを要求するのと同じ脅迫を、『天国と地獄』の犯人は昭和30年代に思いつき実行したのです。今で言えば、立派なテロリストだったから観客はその頭の良さに驚き、怒りを覚えたのではなかったでしょうか?
権藤の決断は、個人としての苦悩を超えて、国家元首が決断を迫られたと同じくらい偉大な決断であったから我々は共感し、声援を贈り、警察のおとり捜査もやむなしと納得したのです。
オリジナル作品の時代的予見性は、単なる営利誘拐の多発を大きく超えて、国際テロ集団の手口をも予言していたと、丑四五郎は言いたい!
そんな偉大な脚本を、安易な脚色でリメイクさせてしまう原作著作権管理者たる黒澤プロダクションの営利第一主義に、ガックリしてしまうのです。
『生きる』もしかり。
期待できるのは、時代設定を変えない『椿三十郎』か?
更に、「ドラマがつまんなかったから映画なんて観ない」という若者を増やさないためにも、今回のテレビ朝日版は危険な賭けだったと断言します。
今回の放送をやめさせる事は不可能ですが、DVD版販売はやめて欲しいと思いますし、こんな道楽はもうやめて、黒澤明塾の再開計画をこそ推進してほしいと、私は願います。

出演:佐藤浩市 阿部寛 鈴木京香 妻夫木聡 橋爪功 伊武雅刀 平田満 小澤征悦 杉本哲太 吹石一恵 六平直政 田口浩正 篠井英介 大西信満 杏 本田博太郎 泉谷しげる 津川雅彦 ほか
『天国と地獄』


天国と地獄 [DVD]

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黒澤明ドラマスペシャル 第一夜 『天国と地獄』
内容製靴会社の常務・権藤は、経営権をつかむために金を用意していた。そんなとき、権藤の家の電話が鳴る。『息子を誘拐した。身代金は3億円』だが、自分の息子はそこに。運転手の青木の息子が、間違えられて誘拐されたのだった。金額は、会社をものにするための金額と同... ...続きを見る
レベル999のマニアな講義
2007/09/10 17:45
「生きる」「天国と地獄」
黒澤明監督による傑作2本を, 二夜連続でドラマリメイク。 ...続きを見る
Akira's VOICE
2007/09/10 18:00
TVドラマ「天国と地獄」を見た
昨晩は夜9時からテレビ朝日製作の、「黒澤明ドラマスペシャル第一夜 天国と地獄」を2時間半も見てしまいました。 {/kaeru_fine/} 結論から言うと豪華な出演者の割りに散漫な話になり、妻役の鈴木京香さんの美しさばかり印象に残りましたよ。 {/kaeru_love/} 何と無く黒澤映画の印象が残っているのでしょう。 今回のリメーク版については老妻と「携帯時代になった現在、旧作の固定電話時代の連絡のもどかしさをどう表現するのだろうか?」と話していたのです。 携帯電話による連絡の容易さ、逆探知技... ...続きを見る
王様の耳はロバの耳
2007/09/10 20:08
映画『天国と地獄』
黒澤明の名作。 ...続きを見る
待ち合わせは本屋さんで
2007/09/10 20:51
『天国と地獄』大拍手
『天国と地獄』 放送日:2007年9月8日(テレビ朝日) 監督・脚色:鶴橋康夫 脚本:小国英雄、菊島隆三、久坂栄二郎、黒澤 明 (原作:エド・マクベイン『キングの身代金』) ...続きを見る
本田博太郎さん観賞ノート
2007/09/10 22:56
テレ朝「天国と地獄」「生きる」をみて
テレ朝の黒澤明ドラマスペシャル「天国と地獄」「生きる」をともにみた。事前の番組宣伝は「生きる」ばかりで「天国と地獄」のほうは付け足し程度だった。そのせいもあり私は「生きる」のほうに期待していた。しかし両方みた感想をいえば圧倒的に「天国と地獄」のほうが面白かった。 出演者のギャラを考えると制作費は「生きる」より「天国と地獄」のほうがおそらく上だろう。 「天国と地獄」はとにかくキャスティングがよかった。特に佐藤浩市、鈴木京香、妻夫木聡は抜群によかった。阿部寛、伊武雅刀、平田満、小澤征悦らもよかった。... ...続きを見る
すがすが日記
2007/09/10 23:54
★「椿三十郎」、男たる者、こうあるべしっ!★
「椿三十郎」 (1962) 日本監督:黒澤明製作:田中友幸 菊島隆三原作:山本周五郎脚本:菊島隆三 小国英雄 黒澤明撮影:小泉福造 斎藤孝雄美術:村木与四郎音楽:佐藤勝出演:三船敏郎 仲代達矢 小林桂樹加山雄三 団令子 志村喬 藤原釜足いつもながら、ネタばればれ.... ...続きを見る
★☆カゴメのシネマ洞☆★ “Kagome...
2007/09/22 15:32

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コメント(11件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは。トラックバックありがとうございました。
じゃあ、丑四五郎さんは、テレビ朝日版『天国と地獄』は
ご覧にならないですか?番組HPでは携帯電話を使っている
シーンがあったので、たぶんいろいろ変わっているとは
思うのですが、なにぶん、黒沢監督の『天国と地獄』を
知らないもので(・・;)
もしご覧になったら、記事かいてくださいね。
「もう、見てられんっ!」ってなるかな。
なおさん
URL
2007/09/03 13:57
なおさんコメントいただき光栄です。今後ともよろしくお願いいたします。
さて、問題の番組ですが、勿論2作品とも観ますし、DVDに録画してオリジナルと比較分析を徹底的にいたします。『椿三十郎』もしかり。
民放と黒澤プロの考える事は同じ。視聴率がよければ2匹目のドジョウを狙って、他の黒澤作品のドラマ化もバンバンやるでしょう。その暴挙を科学的分析を裏付けに反対する為にも、今回の作品は反面教師的なものとして用材料になると思います。
ただ、予想以上に良い作品に強いあがっていればそれにこしたことはありません。ドラマを観た人がTSUTAYAに駆け込み、黒澤映画版を再見してくれるでしょうから。
要は、危険な賭けだということです。丑四五郎が懸念する理由を記事に書いただけですので、みんなでじっくり見極めようじゃないですか。
たとえドラマがつまらなくても、オリジナル映画はすばらしいから是非ご覧になってください、そう訴えたかった訳でございます。ご理解下さい。
丑四五郎
URL
2007/09/07 16:02
>ナンバーディスプレーが当たり前で通話明細で相手の電話番号も後で簡単に調べられ・・・

いくらなんでも、このドラマの製作者をバカにしすぎです。
書かれてることですが、抜け道はありますので。
(犯罪を助長することになるので書きませんが)

それから、あれは子供の生の姿を見せて確認することに
意味があるのではないですか?
「天国と地獄」でも動画は無理でも「子供の声を聞かせろ」ぐらいなら可能ですし。
(犯人は録音した声を聞かせればいい)

さらにいうと、当時でもあの要求に簡単に応じるのは
変なのです。
犯人はそれでも、自分は捕まらないという自信があったから応じた。犯人はゲームを楽しむ感覚でわざとハンデをつけてやるという感覚だったと私は思います。
頭が悪いのではなく、自分の頭の良さを誇示するための
ものです。

>安易な脚色でリメイクさせてしまう原作著作権管理者たる黒澤プロダクションの営利第一主義に、ガックリしてしまうのです。

それは見てから文句を言いましょう。
「キングの身代金」からのエピソードを
引用したり、必ずしも同じではないようです。
てんぺすと
2007/09/07 23:40
てんぺすとさん書き込み有難うございます。番組予告編を観ての感想記事です。なおさんへの返事も読んで下さい。明日からの放送を分析した上で、追加記事を出します。
丑四五郎
URL
2007/09/08 00:18
今回のテレビドラマは最悪でした。
全く感情移入ができませんでした。あまりにも今の時代に合っていなくて。
丑四五郎さんの言うように犯人の犯行動機が今の時代に理解されがたいからだと思います。

演出面では、出てきた特急列車は、北海道の特急を使えばいいのに、JR西日本のあれはおそらくサンダーバードっていう富山とか京都とか走る列車を使ってました。
北海道人として興ざめでした。(撮影協力で「JR西日本」と書いてあった)
もうひとつ小樽人として言わせてもらうと、小樽を誤解したドラマですよ。
埠頭にあんなにたくさんの人間歩いてませんから。不自然極まりないシーンが多すぎる。北一硝子やメルヘン交差点など、小樽の観光スポットをPRするだけの、イメージドラマ。全体的にほんと、呆れてしまいました。
テレ朝のHPの掲示板がほとんど絶賛する意見でした。関係者の意見ではないかと、疑いたくなります。
小樽人
2007/09/09 10:07
すみみません、僕も飛び込みで
書き込みさせて下さい。
黒澤監督の映画を見たことはないのですが
伝説的な拘りや各メディアの評価などは
知っていましたし、豪華なキャスト陣、
地元でのロケと、とても期待して見ました。

ですが、冒頭からなにか違和感というか、
あれ?っと思える雰囲気でした。
時間的制約なのか誘拐事件が起きるまでが
トントン拍子で、まったく感情移入できる間もない
展開です。

小樽人さんも書いておられる様に、
演出面でも全く、NGです。
運転手の青木が乗る車ならず、
警察車両でさえ、『わ』ナンバーのレンタカー…

見終わった正直な感想としては
よくある、『○○湯煙殺人事件〜××編』のような
ドラマレベルでした。
もしかすると、最初からその辺を狙った
ドラマだったのでしょうか。

今日も第二夜がありますが、
当然見る気にもなれません。
一夜明けてテレ朝のオフィシャルページには
僕のような書き込みが沢山あるハズと思い込んで
見に行ったら驚きのコメントばかり。
思わずこちらに書き込みさせていただいた次第です。

札幌人
2007/09/09 12:27
小樽人さん札幌人さん、貴重なご意見有難うございます。スタッフの苦労を思うと、攻められるべきはプロデューサーと脚本家です。こんな辻褄の合わないストーリーの末に、ラストの犯人の告白がオリジナル映画版と一字一句同じであった事は決定的な失敗だったと言わざるを得ません。あんなに自信満々だった犯人があんな情けない台詞を吐くとは?映画版と同じ台詞なのに、印象が180度違って聞こえたところに、ドラマの失敗が裏付けられていたと言えると思います。残念で涙が出ます!
丑四五郎
URL
2007/09/09 18:48
丑四五郎さん、お久しぶりでございます!!

当方、テレビドラマはまったく見ないもんで、
この「天国と地獄」のテレビ朝日版リメイクも見てないんですが、
設定をまったく変えずにリメイクするなんて、そもそもリメイクに値しませんですね(苦笑)。
見る間でもなく「駄目」そうな(笑)。
そう言えば、「椿三十郎」(織田裕二)の方はどーなってんでしょうね?
カゴメ
URL
2007/09/22 15:43
カゴメさんコメントありがとうございます。
9月は、黒澤監督がお亡くなりになった月でありましたから、無節操なリメイクではあっても、オリジナル版の映画をご覧になる方が増えた様なので、結果オーライかなと感じています。年末の『椿三十郎』は予告編を見る限りではやはり無謀か?と思いつつ、織田さん頑張ってるな、森田監督は楽しくて幸せだったろうな、等など・・・。黒澤監督もあの世で笑ってご覧になっておられると・・・、何かと肯定的に、しんみりと眺める心境になりました。今後ともよろしくお願いいたします。
丑四五郎
URL
2007/09/30 01:11
現代なら身代金を入れるカバンに発信機を仕込むのが普通じゃないかな。

犯人も当然それは考えるでしょうから、身代金を受け取ったらカバンはすぐに捨てるハズです。

後生大事に家まで持ってきてベッドの下に隠しておくのはどうかと思います。

ダイオキシン問題で焼却炉がなくなってますので、海岸で船を燃やしてボタン色の煙が出る設定に変えたんでしょうが、乗らなくなった船を燃やしたりする漁師さんて本当にいるのですか?
黒澤好き
2007/12/19 09:22
>黒澤好きさん、全く持ってそのとおりです。『天国と地獄』を製作した当時は警察の捜査がこんなに細かい証拠分析の積み重ねで行われていると描いた日本映画は他になかったんです。シナリオハンティング中に黒澤監督はそれを知ってこの作品に盛り込みたいとお考えになった。その作家魂にこたえるならば、リメイクドラマ班は現代の捜査手順を克明に描き出し、後半の犯人逮捕に至るまでにエピソードはすべてリライトしてしかるべきだった。ところがそれを全くしなかった。海岸で船を焼く漁師も不自然なら、そのおっさんが「あれはどう観てもインターンだったな」なんて台詞を発するはずがないわけで・・・。結局、シナリオの改変に制限を付け過ぎたのが黒澤プロの担当がオリジナル作品の真意を理解しないままに版権管理業を行っているのが原因ではないかと思われてしょうがないです。椿三十郎のリメイク権が三億円?その三億円を何に使っていくのかが問われるとも思います。黒澤明塾は再開しないんでしょうかね?
丑四五郎
URL
2007/12/25 22:31

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